このすごいモツ煮込み丼は、いかにしてここにあるのだろう?ー鴨川・江見海水浴場 海の家HAPPY 前編

ビーチを間近で眺めながら堪能できる、最高に美味いモツ煮丼がある。しかも、この夏が終わる頃には、砂に描いた絵のごとく幻になるかもしれないメニューなのだ。この夏訪れるべき穴場中の穴場、「江見 海の家 HAPPY」と、店主である仲丸さんの自慢のモツ煮丼を紹介しよう。

目次

ザ・海の家の佇まい、いろいろ胸熱な海遊びの休憩処

安房鴨川駅から館山に向けて車で15分。江見海水浴場は、鴨川市の中でも、ひときわこぢんまりとしてアットホームなビーチだ。コロナ禍から4年越しで海開きが決まった砂浜の端に、ひょこっと1軒、海の色と同じ塗りたての青いペンキが映える、真新しい海の家があらわれた。「江見海の家 HAPPY」だ。

江見海の家HAPPYの外観。塗りたての青い壁が映える高床式の建物

海の家 HAPPYは、南国のビーチハウスを思わせる、それでいて日本の昔懐かしい「ザ・海の家」の雰囲気もある作り。

赤いペンキで書かれた「海の家」の看板と、かき氷とビールののぼりに迎えられて入る店内は、簡易的にみえて意外にも堅牢な作りで、高床式の店の階段を登ると、ゆったりした5席のテーブルと、海を望むカウンターがある。

テーブルを囲んで家族や友達ともりもり食事をするのにも、一人でビールとつまみを頼んで海を見ながら黄昏れるのにも、ちょうど良さそうな店構えだ。

江見海水浴場は、子供連れの水遊びにちょうどいい。最盛期の土日でも十分空いていて、規模が小さい分人の目が届く。海水の水質はAランクで、鴨川で一番大きなビーチである前原海水浴場と比べても高いそうだ。

海開き期間はライフガードが常駐し、ビーチにやってくる一人一人声をかける。「暑いので水分補給に気をつけてくださいね」「今日は波が少し荒いので、遊泳区域の中にいてくださいね」と、毎日の天気に応じて、丁寧なアドバイスをくれるのがありがたい。

時間をかけて仕込んだ、こだわりの海飯メニュー

店を切り盛りするのは店長の仲丸明宏(なかまる・あきひろ)さんと、お手伝いの岡田律子(おかだ・りつこ)さん。仲丸さんはサーファーだ。江見の波に惚れ込んで、東京から20年通い続けている。海の家 HAPPYに出資した仲間に「店をやってみない?」と声をかけられて始めた。

笑顔で迎えてくれる、店長の仲丸さん

仲丸さんの物語に入る前に、まずはの海飯について解説しよう。HAPPYが提供するメニューはこんな感じだ。

お食事金額おつまみ・デザート金額
醤油ラーメン800円もつ煮400円
カレーライス800円枝豆300円
もつ煮丼800円トルティーヤチップス
(サルサソースとアボカドディップ)
500円
ソース焼きそば700円フライドポテト500円
テイクアウト用ソース焼きそば500円かき氷300円
週末限定冷製パスタ800円アイス(氷)100円

海で遊んで腹ぺこの人向けの、がっつり炭水化物の王道メニューと、ふらっと訪れるご近所さんやサーファーさん、カップルで、ビールやハイボール、ソフトドリンクと一緒に頼みたい王道おつまみが充実。

ありがちなメニューに見えるが、あなどるなかれ。すべて仲丸さんのこだわりが詰まった手作り料理なのだ。波乗りの後で仲間に振舞っていた料理のなかから、海の家のお客さんに合わせたメニューを厳選して提供している。

モツは一頭買いの肉屋から仕入れ、ラーメンは出汁から作る

「一番のオススメは?」と聞くと「もつ煮丼ですよ!」と即答する仲丸さん。メニューの中で最初に決めたのが「もつ煮」だった。これが本当に美味しい。ずいぶん本格的なのだが、聞いてみると「肉の鮮度が違う」と言う。

自慢のモツ煮丼。肉厚のモツがふんだんに乗っている

ある日海の家を訪ねると臨時休業の看板が上がっていた。翌日仲丸さんに聞くと、「モツの仕入れに神奈川まで行っていましてね」というのだ。川崎市にある精肉店、浅見肉店(もつのあさみ)まで通い、仲丸さんが新鮮なモツ肉を調達してくるらしい。

「一頭飼いの肉屋でね。すごく新鮮なモツ肉を自分で見て買ってくるんです。モツ煮は鮮度が大切。素材さえ良ければ、臭みがなく美味しくできますからね」と語る。

このモツ煮丼、とにかくモツが肉厚だ。肉厚でフレッシュなのに、じっくり味が染みている。味が染みて柔らかいのに、絶妙にハリを保っていて、いろいろな部位の食感の違いが存分に楽しめる。圧倒的にモツが主役だけれど、さりげなく根菜とこんにゃくが煮込まれていて、煮卵とたっぷり散らしたネギがアクセントになっている。ご飯と一緒に一気にかきこみたくなるような、もったいないような。

三世代で海を楽しんでいた向かいの家族は、醤油ラーメンを注文していた。この醤油ラーメンのスープも仲丸さんが作る自家製だ。ソウダガツオ(めじか)から作る宗田節で出汁を取る。

具はわかめとチャーシューだが、このチャーシューにも秘密がある。同じく江見に通うサーフィン仲間で、元航空会社の機内食調理人がいる。この人が趣味で作るチャーシューがべらぼうにうまい。海の家でラーメンを出すと決めた時に、「あのチャーシューをどうしても乗せたいんだ」とお願いした。以来その仲間が四街道から届けてくれるのだという。

子供の頃の夏のような、美味しいものの思い出作り

本当に美味しいものってなんだろう?炎天下の江見の砂浜を歩いてHAPPYに通い、その週すでに3回目の、仲丸さんのモツ煮丼を思いっきりかきこみながら考える。

子供の頃に遊び疲れて帰った時に、祖母が作って待っていてくれた家のカレーライス。家族が集まるバーベキューで、料理自慢のおじさんがストーブで半日かけて焼いたほろほろのローストポーク。美味しいものの記憶には、それを食べた時のシーンと、作ってくれた人の思いと表情が含まれていると思う。

がつんと味のしみたモツ肉と、その汁が沁みた真っ白な米飯。そんなの、美味しくないわけがない。でもそれだけではない。海の家の小さな簡易キッチンで鍋をかき混ぜながら、このモツの凄さについて熱く語る一夏の料理人の後ろ姿は、子供時代の夏の美味しい記憶を思い出させる。

夏が幻のように過ぎてしまう前に、美味しい夏の思い出づくりに館山〜鴨川にお越しの際に立ち寄ってはいかがだろうか。

スポット情報

江見海の家 HAPPY

住所 千葉県 鴨川市 東江見地先海岸 江見海水浴場内

アクセス 安房鴨川駅から館山方面に車で15分 

営業時間 10:00-16:00(天候等による臨時休業あり)

駐車場 あり(海水浴場併設)

トイレ あり(海水浴場併設)

支払方法 クレジットカード、電子マネー対応

注意事項 2023年夏の海開き期間は7月27日~8月27日。※HAPPYの今年の閉店日はまだ未定です。

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この記事を書いた人

ミル房総の編集長・ライター。房総半島の鴨川市に拠点を置いて、地域の人々のライフスタイルを取材している。ダイビングとサーフィン初心者。

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