「なめがわダイビングサービスの人々」、”とりあえず”の最終話は、1年と少し前から働き始めた常勤スタッフで、ダイビングインストラクターの海斗さんの話だ。
人が喜んでくれるのが、自分にとって一番幸せなことなんだ、と語る海斗さん。大学卒業後、伊豆での見習いガイドから勝浦の海へ移り、運命的な出会いを得てなめがわに飛び込んだ、笑顔がまぶしい新星スタッフの物語を伺った。
千葉県の房総半島の外房、勝浦市の行川漁港にあるダイビング拠点。鵜原漁港の「勝浦ダイビングサービス」と並んで、勝浦の海の多彩なダイビングポイントを提供している。関東全域の多くのダイビングショップ・オーナーや、個人のダイバーが訪れる。
タイムリミット直前に飛び込んできた新星
海斗さんから「ここで働きたい」と行川ダイビングサービスに電話があったのは、古株の従業員が退職するちょうど1週間前だったという。
海斗さんは行川の常勤スタッフの中ではひときわ若く、キラキラ目を引く存在だ。ダイビングは年齢問わずできるスポーツであるため、お客さんもインストラクターも年齢層が幅広い。比較的落ち着いた人たちが多い中、一人、俊敏に施設の中を動き回って働いている。
「1年間、新しい従業員を探していたの。でも全然良い人がみつからなくて。で、前の従業員が辞めるギリギリ前に海斗から突然、電話があったの。運命ってあるんだねー」とレイコさん。海斗さんがなめがわダイビングサービスに就職したのは2023年の1月。一年とすこし前だ。
面接で即採用 ピンときた運命の出会い
海を名前にもつ海斗さんは、友達と旅先でダイビングライセンスを取ったことがきっかけで、ダイビングと、海そのものにはまっていった。
「大学でも海のことを勉強したくて、アメリカのカリフォルニア州立大学の海洋学科に留学しました。ところが、当時コロナ禍で大学にいけなくなってしまって。学校をやめてダイビングインストラクターになろうと決めました」
日本で都市型の大手ダイビングショップで資格をとった後、伊豆の現地ダイビングガイドとして2ヶ月ほど住み込みのアルバイトをしながら就職先を考えた。大手の都市型ショップには仕事があるかもしれない。でも、ダイビング機材を売る仕事よりも、現地ガイドとしてお客さんをのんびりサポートするほうが自分の性に合っている気がする。
PADIのホームページで実家に近い千葉のダイビングショップを検索して、一番最初に見つけたのがなめがわダイビングサービスだった。求人情報は出ていない。ダメ元で電話をしたら、電話口の主人は「ちょうど人を探していた」という。
「面接に行ったら、会ってすぐにレイコさんに『働いてみちゃう?』って言われて、びっくりして」とカイトさん。
「1年も人を探してて、なぜ海斗さんに決めたんですか?」と尋ねると、レイコさんは言った。
「ピンと来たの。あ、この子だなって。働きたいって面接に来た人はそれまでにもいたけど、なんかこう、あるでしょう?相性っていうのかな。運命の出会いだったのよね」
レイコさんはもう一度、「運命」と繰り返した。きっと抜けていたパズルのピースがバチっとハマるような、爽快な出会いだったのだろう。
ダイビングは本物のエンターテインメント
勤めてみると、ダイビングサービスにはショップの現地ガイドとは違った苦労もある、と海斗さんは言う。
「タンクの整備や準備など他のダイビングショップさんのお世話をしながら、自分のお客さんのガイドもするので、大変は大変です」そして、付け加えた。「でも、自分にはこの仕事が向いていると思います」
「なぜそう思うんですか?」
「僕はエンターテインメントの仕事をするのが夢だったんです」とカイトさんは少し考えてから意外なことを言った。
「ダイビングガイドをしていると、その夢に近いことを今しているのかもしれない、と思います。ゲストさんが水中で珍しい魚を見て『わー!』って感動してくれるのを間近で見られるのが本当に楽しくて。もっと楽しいのは、ダイビングが終わった後。ダイビング・ログを記録する時に『あの魚に出会えてよかったね〜』って感動しながら話している様子を眺めている時なんです。そんな時、ああ、この仕事をやっててよかったなって思う。人が喜んでくれるのが、自分にとって一番幸せなことなんだと思うんです」
ダイビングは、自然をありのまま体験するエンターテインメント。確かにそう言えるかもしれない。しかもサービスを通じて提供できるその体験は、作り物ではない、本物の体験だ。
魚と一緒に、人にも癒されに来る「やわらかい場所」
こんな若造の話を聞いてくれて嬉しい、と海斗さんは笑うが、そんな若造は勝浦の一夏で美しく日に焼けて、古株の猫たちのようにかけがえのない存在になっている。他の土地でインストラクターをした経験を経て、行川に留まった海斗さんにとって、ここはどんな場所なんだろう。
「陸の話で言えば」と海斗さんは前置きした。ダイバーはよく海と陸の二元論で話をすることが多いのだ。「『やわらかい』です」
『やわらかい』、どういう意味でだろう?
「ここでは、お客さんも、サポートをする自分たちも、やわらかい感じがする。人が優しくてフレンドリーだから、いつもやわらかく居られるのかもしれないです」と海斗さんは言う。
それは、勝浦という地域の特徴なんだろうか?と聞くと、少し考えて、そうだと思う、と海斗さんは答えた。
「行川には、うちのサービスの雰囲気が好きで来てくれるっていう人が多いと思う。ここにいる人たちが好きだから、魚と一緒に、人にも癒されに来る。そんな場所なんだと思います」
彼もまた、そんな人々を癒す存在の一人になろうとしているのだ。
将来のことはわからない、と海斗さんは言う。「いつか海外にもチャレンジしてみたいけれど、今は、ここでの仕事を極めることが目標です。ちゃんと、しっかり、できるようになりたいんです」。
(おわり)
なめがわダイビングサービス
なめがわダイビングサービスは新勝浦市漁業協同組合が運営するダイビングサービス兼ショップ。初心者から上級者までが楽しめる5つのダイビング・ポイントがある。漁港近くの浅瀬では、白くて美しい海底の砂地と、イソギンチャクの群生が見られる。
住所
〒299-5255 千葉県勝浦市浜行川166-2
電話番号
080-5053-1835(携帯)、0470-76-3480(ショップ)
メールアドレス
dive@namegawa-ds.com
営業時間
8:00 AM – 4:00 PM(電話は21時まで)
※2日経ってもメールの返信が無い場合は、迷惑メールに振り分けられている場合が御座いますので、お手数ですがお電話か別メールにて再度ご連絡下さい。
勝浦ダイビング協会所属ショップ一覧
勝浦ダイビング協会では、8つのダイビングショップが連携しています。南房総・勝浦海域の環境保全、海洋生物の調査を通じて、勝浦の海の素晴らしさを世界に伝えています。
ほとんどのダイビングショップは、ウェブサイトに掲載されたメールか電話番号に予約をする仕組みです。各ダイビングショップの情報は以下から!
千葉・房総半島のダイビングサービス一覧
千葉ダイビングサービス協力会に登録する9つのダイビングサービスです。各地のダイビングサービスの多くは、個人のお客さんのガイドと、ダイビングショップのガイドさんへのサービスの両方を行っています。
ここで潜りたい!という方は、ダイビングサービスに問い合わせるか、近隣のダイビングショップにご相談ください。
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